らば、また吾をも刑余に慕ひて、その誠を全《まつた》うしたらんや。唯継《ただつぐ》の金力を以て彼女を脅《おびやか》したらんには、またかの雅之を入獄の先に棄てたりけんや。耀《かがや》ける金剛石《ダイアモンド》と汚《けが》れたる罪名とは、孰《いづれ》か愛を割《さ》くの力多かる。
彼は更にかく思へり。
唯その人を命として、己《おのれ》も有らず、家も有らず、何処《いづこ》の野末《のずゑ》にも相従《あひしたが》はんと誓へるかの娘の、竟《つひ》に利の為に志を移さざるを得べきか。又は一旦その人に与へたる愛を吝《をし》みて、再び価高く他に売らんと為るなきを得べきか。利と争ひて打勝れたると、他の愛と争ひて敗れたると、吾等の恨は孰に深からん。
彼は又かくも思へるなり。
それ愛の最も篤《あつ》からんには、利にも惑はず、他に又|易《か》ふる者もあらざる可きを、仮初《かりそめ》もこれの移るは、その最も篤きにあらざるを明《あか》せるなり。凡《およ》そ異性の愛は吾愛の如く篤かるを得ざる者なるか、或《ある》は己の信ずらんやうに、宮の愛の特《こと》に己にのみ篤からざりしなるか。吾は彼の不義不貞を憤るが故《ゆゑ》に
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