ぶ》きて起たんと為《す》なり。
「解つても解らんでも可いから、まあ話すだけは話してくれ給へ」
「それを聞いてどう為る。ああ貴様は何か、金でも貸さうと云ふのか。No thank《ノオ サンク》じや、赤貧洗ふが如く窮してをつても、心は怡然《いぜん》として楽んでをるのじや」
「それだから猶《なほ》、どう為てさう窮して、それを又楽んでゐるのか、それには何か事情が有るのだらう、から、それを聞せてくれ給へと言ふのだ」
 荒尾は故《ことさ》らに哈々《こうこう》として笑へり。
「貴様如き無血虫《むけつちゆう》がそんな事を聞いたとて何が解るもので。人間らしい事を言ふな」
「さうまで辱《はづかし》められても辞《ことば》を返すことの出来ん程、僕の躯《からだ》は腐つて了つたのだ」
「固よりじや」
「かう腐つて了つた僕の躯《からだ》は今更為方が無い。けれども、君は立派に学位も取つて、参事官の椅子にも居た人、国家の為に有用の器《うつは》であることは、決して僕の疑はんところだ。で、僕は常に君の出世を予想し、又|陰《ひそか》にそれを祷《いの》つてをつたのだ。君は僕を畜生と言ひ、狂人と言ひ、賊と言ふけれど、君を懐《おも
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