得られんのではない、不正な手段を用《もちゐ》んでも、富む道は幾多《いくら》も有るぢやらう。君に言ふのも、な、その目的を変へよではない、止《た》だ手段を改めよじや。路《みち》は違へても同じ高嶺《たかね》の月を見るのじやが」
「辱《かたじけ》ないけれど、僕の迷は未だ覚めんのだから、間は発狂してゐる者と想つて、一切《いつせつ》かまひ付けずに措いてくれ給へ」
「さうか。どうあつても僕の言《ことば》は用《もちゐ》られんのじやな」
「容《ゆる》してくれ給へ」
「何を容すのじや! 貴様は俺を棄てたのではないか、俺も貴様を棄てたのじやぞ、容すも容さんも有るものか」
「今日限《こんにちかぎり》互に棄てて別れるに就いては、僕も一箇《ひとつ》聞きたい事が有る。それは君の今の身の上だが、どうしたのかね」
「見たら解るぢやらう」
「見たばかりで解るものか」
「貧乏してをるのよ」
「それは解つてゐるぢやないか」
「それだけじや」
「それだけの事が有るものか。何で官途を罷《や》めて、さうしてそんなに貧乏してゐるのか、様子が有りさうぢやないか」
「話したところで狂人《きちがひ》には解らんのよ」
 荒尾は空嘯《そらうそ
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