身を抛《なげう》ちてベットに伏したり。
 厚き蓐《しとね》の積れる雪と真白き上に、乱畳《みだれたた》める幾重《いくへ》の衣《きぬ》の彩《いろどり》を争ひつつ、妖《あで》なる姿を意《こころ》も介《お》かず横《よこた》はれるを、窓の日の帷《カアテン》を透《とほ》して隠々《ほのぼの》照したる、実《げ》に匂《にほひ》も零《こぼ》るるやうにして彼は浪《なみ》に漂ひし人の今|打揚《うちあ》げられたるも現《うつつ》ならず、ほとほと力竭《ちからつ》きて絶入《たえい》らんとするが如く、止《た》だ手枕《てまくら》に横顔を支へて、力無き眼《まなこ》を※[#「※」は「目+登」、312−5]《みは》れり。竟《つひ》には溜息《ためいき》※[#「※」は「口+句」、312−5]《つ》きてその目を閉づれば、片寝に倦《う》める面《おもて》を内向《うちむ》けて、裾《すそ》の寒さを佗《わび》しげに身動《みうごき》したりしが、猶《なほ》も底止無《そこひな》き思の淵《ふち》は彼を沈めて※[#「※」は「しんにょう+官」、312−6]《のが》さざるなり。
 隅棚《すみだな》の枕時計は突《はた》と秒刻《チクタク》を忘れぬ。益《ますま》
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