さいまし、唯今《ただいま》直《ぢき》に御飯が参りますですから」
「や、飯《めし》なら欲うありませんよ」
「私は未だ申上げたい事が有るのでございますから、荒尾さんどうかお坐り下さいまし」
「いくら貴方が言うたつて、返らん事ぢやありませんか」
「そんなにまで有仰らなくても、……少しは、もう堪忍《かんにん》なすつて下さいまし」
 火鉢《ひばち》の縁《ふち》に片手を翳《かざ》して、何をか打案ずる様《さま》なる目を※[#「※」は「(睹−目)/(翕−合)」、298−15]《そら》しつつ荒尾は答へず。
「荒尾さん、それでは、とてもお聴入《ききいれ》はあるまいと私は諦《あきら》めましたから、貫一《かんいつ》さんへお詑の事はもう申しますまい、又貴方に容して戴く事も願ひますまい」
 咄嗟《とつさ》に荒尾の視線は転じて、猶|語続《かたりつづく》る宮が面《おもて》を掠《かす》め去《さ》りぬ。
「唯一目私は貫一さんに逢ひまして、その前でもつて、私の如何《いか》にも悪かつた事を思ふ存分|謝《あやま》りたいので御座います。唯あの人の目の前で謝りさへ為たら、それで私は本望なのでございます。素《もと》より容してもらはう
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