自ら容されたのは人に赦さるる始――解りましたか。
で、間に取成してくれい、詑《わび》を言うてくれい、とのお嘱《たのみ》ぢやけれど、それは僕は為《せ》ん。為んのは、間に対してどうも出来んのぢやから。又貴方に罪有りと知つてをりながらその人から頼まるる僕でない。又僕が間であつたらば、断じて貴方の罪は容さんのぢやから。
かうして親友の敵《かたき》に逢うてからに、指も差さずに別るる、これが荒尾の貴方に対する寸志と思うて下さい。いや、久しぶりで折角お目に掛りながら、可厭《いや》な言《こと》ばかり聞せました。それぢや、まあ、御機嫌好《ごきげんよ》う、これでお暇《いとま》します」
会釈して荒尾の身を起さんとする時、
「暫《しばら》く、どうぞ」宮は取乱したる泣顔を振挙《ふりあ》げて、重き瞼《まぶた》の露を払へり。
「それではこの上どんなにお願ひ申しましても、貴方はお詑を為《なす》つては下さらないので御座いますか。さうして貴方もやはり私《わたくし》を容《ゆる》さんと有仰《おつしや》るので御座いますか」
「さうです」
忙《せは》しげに荒尾は片膝《かたひざ》立ててゐたり。
「どうぞもう暫くゐらしつて下
前へ
次へ
全708ページ中438ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 紅葉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング