て愛無かりし匹婦《ひつぷ》、憎しとも憎しと思はざるにあらぬ荒尾も、当面に彼の悔悟の切なるを見ては、さすがに情《じよう》は動くなりき。宮は際無《はてしな》く顔を得挙《えあ》げずゐたり。
「然し、好う悔悟を作《なす》つた。間が容さんでも、又僕が容さんでも、貴方はその悔悟に因《よ》つて自ら容されたんじや」
 由無《よしな》き慰藉《なぐさめ》は聞かじとやうに宮は俯《ふ》しながら頭《かしら》を掉《ふ》りて更に泣入りぬ。
「自《みづから》にても容されたのは、誰《たれ》にも容されんのには勝《まさ》つてをる。又自ら容さるるのは、終には人に容さるるそれが始ぢやらうと謂《い》ふもの。僕は未《ま》だ未だ容し難く貴方を怨む、怨みは為るけれど、今日《こんにち》の貴方の胸中は十分察するのです。貴方のも察するからには、他の者の間《はざま》の胸中もまた察せにやならん、可いですか。さうして孰《いづれ》が多く憐《あはれ》むべきであるかと謂へば、間の無念は抑《そもそも》どんなぢやらうか、なあ、僕はそれを思ふんです。それを思うて見ると、貴方の苦痛を傍観するより外は無い。
 かうして今日《こんにち》図らずお目に掛つた。僕は婦人
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