礼を申しまするじや、で、な、お礼はお礼、今の御忠告は御忠告じや、悪う取つて下さつては困る。貴方がそんなに念《おも》うて、毎々お訪ね下さると思や、私も実に嬉いで、折角の御好意をな、どうか卻《しりぞく》るやうな、失敬なことは決して言ひたうはないんじや、言ふのはお為を念ふからで、これもやつぱり年寄役なんぢやから、捨てて措《お》けんで。年寄と云ふ者は、これでとかく嫌《きら》はるるじや。貴方もやつぱり年寄はお嫌ひぢやらう。ああ、どうですか、ああ」
赤髭《あかひげ》を拈《ひね》り拈りて、直行は女の気色《けしき》を偸視《ぬすみみ》つ。
「さやうでございます。お年寄は勿論《もちろん》結構でございますけれど、どう致しても若いものは若い同士の方が気が合ひまして宜いやうでございますね」
「すぢやて、お宅の赤樫さんも年寄でせうが」
「それでございますから、もうもう口喧《くちやかまし》くてなりませんのです」
「ぢや、口喧うも、気難《きむづかし》うもなうたら、どうありますか」
「それでも私好きませんでございますね」
「それでも好かん? 太《えら》う嫌うたもんですな」
「尤《もつと》も年寄だから嫌ふ、若いから一概
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