それこそ、御妻君が在《ゐら》つしやるのですから、余り頻繁《しげしげ》上りますと……」
 後は得言はで打笑める目元の媚《こび》、ハンカチイフを口蔽《くちおほひ》にしたる羞含《はぢがま》しさなど、直行はふと目を奪はれて、飽かず覚ゆるなりき。
「はッ、はッ、はッ、すぢや細君が無いで、ここへは安心してお出《いで》かな。私《わし》は赤樫さんの処へ行つて言ひますぞ」
「はい、有仰《おつしや》つて下さいまし。私《わたくし》此方《こなた》へ度々お見舞に出ますことは、宅でも存じてをるのでございますから、唯今も貴方《あなた》から御注意を受けたのでございますが、私も用を抱へてをる体でかうして上りますのは、お見舞に出なければ済まないと考へまする訳がございますからで、その実、上りますれば、間さんは却《かへ》つて私の伺ふのを懊悩《うるさ》く思召《おぼしめ》してゐらつしやるのですから、それは私のやうな者が余り参つてはお目障《めざはり》か知れませんけれど、外の事ではなし、お見舞に上るのでございますから、そんなに作《なさ》らなくても宜《よろし》いではございませんか。
 然し、それでも私気に懸つて、かうして上るのは、でご
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