ざいます。始終好い加減なことを申しては遁《に》げてをるのですけれど、鰐淵さんは私が貴方をこんなに……と云ふ事は御存じなかつたのですから、それで済んでをりましたけれど、貴方が御入院あそばしてから、私かうして始終お訪ね申しますし、鰐淵さんも頻繁《しげしげ》いらつしやるので、度々《たびたび》お目に懸るところから、何とかお想ひなすつたのでございませう。それで、この間は到頭それを有仰《おつしや》つて、訳が有るなら有るで、隠さずに話をしろと有仰るのぢやございませんか。私為方がありませんから、お約束をしたと申して了《しま》ひました」
「え!」と貫一は繃帯《ほうたい》したる頭を擡《もた》げて、彼の有為顔《したりがほ》を赦《ゆる》し難く打目戍《うちまも》れり。満枝はさすが過《あやまち》を悔いたる風情《ふぜい》にて、やをら左の袂《たもと》を膝《ひざ》に掻載《かきの》せ、牡丹《ぼたん》の莟《つぼみ》の如く揃《そろ》へる紅絹裏《もみうら》の振《ふり》を弄《まさぐ》りつつ、彼の咎《とがめ》を懼《おそ》るる目遣《めづかひ》してゐたり。
「実に怪《け》しからん! ※[#「※」は「言+(「荒」の「亡」の代わりに「曷−
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