うお前には用は無いからどうでも独《ひとり》で勝手に為るが可い、と云ふやうな不人情なことを仮初《かりそめ》にも為たのぢやなし、鴫沢の家は譲らうし、所望《のぞみ》なら洋行も為《さ》せやうとまで言ふのぢやないか。それは一時は腹も立たうけれど、好く了簡して前後を考へて見たら、万更訳の解らない話をしてゐるのぢやないのだもの、私達の顔を立ててくれたつて、そんなに罰《ばち》も当りはしまいと思ふのさ。さうしてお剰《まけ》に、阿父さんから十分に訳を言つて、頭を低《さ》げないばかりにして頼んだのぢやないかね。だから此方《こつち》には少しも無理は無い筈《はず》だのに、貫一が余《あんま》り身の程を知らな過《すぎ》るよ。
それはね、阿父さんが昔あの人の親の世話になつた事があるさうさ、その恩返《おんがへし》なら、行処《ゆきどこ》の無い躯《からだ》を十五の時から引取つて、高等学校を卒業するまでに仕上げたから、それで十分だらうぢやないか。
全く、お前、貫一の為方《しかた》は増長してゐるのだよ。それだから、阿父さんだつて、私だつて、ああされて見ると決して可愛《かはゆ》くはないのだからね、今更|此方《こつち》から捜出
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