の数々を※[#「※」は「口+耳」、222−10]《ささや》きて止まざれど、宮が耳には人の声は聞えずして、雪の音のみぞいと能《よ》く響きたる。
 その雪は明方になりて歇《や》みぬ。乾坤《けんこん》の白きに漂ひて華麗《はなやか》に差出でたる日影は、漲《みなぎ》るばかりに暖き光を鋪《し》きて終日《ひねもす》輝きければ、七分の雪はその日に解けて、はや翌日は往来《ゆきき》の妨碍《さまたげ》もあらず、処々《ところどころ》の泥濘《ぬかるみ》は打続く快晴の天《そら》に曝《さら》されて、刻々に乾《かわ》き行くなり。
 この雪の為に外出《そとで》を封ぜられし人は、この日和《ひより》とこの道とを見て、皆|怺《こら》へかねて昨日《きのふ》より出でしも多かるべし。まして今日となりては、手置の宜《よろし》からぬ横町、不性なる裏通、屋敷町の小路などの氷れる雪の九十九折《つづらをり》、或《ある》は捏返《こねかへ》せし汁粉《しるこ》の海の、差掛りて難儀を極《きは》むるとは知らず、見渡す町通《まちとほり》の乾々干《からからほし》に固《かたま》れるに唆《そその》かされて、控へたりし人の出でざるはあらざらんやうに、往来《ゆき
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