淡で可かんと謂ふんさ。ぢや、酒の入らんのを飲むと可い。寄鍋は未《まだ》か。うむ、彼方《あつち》に支度がしてあるから、来たら言ひに来る? それは善い、西洋室の寄鍋なんかは風流でない、あれは長火鉢《ながひばち》の相対《さしむかひ》に限るんさ。
 可いかね、福積の招待《しようだい》には吃驚《びつくり》させるほど美《うつくし》くして出て貰はなけりやならん。それで、着物だ、何か欲ければ早速|拵《こしら》へやう。おまへが、これならば十分と思ふ服装《なり》で、隆《りゆう》として推出すんだね。さうしてお前この頃は余り服装《なり》にかまはんぢやないか、可かんよ。いつでもこの小紋の羽織の寐恍《ねぼ》けたのばかりは恐れるね。何為《なぜ》あの被風《ひふ》を着ないのかね、あれは好く似合ふにな。
 明後日《あさつて》は日曜だ、何処《どこ》かへ行かうよ。その着物を見に三井へでも行かうか。いや、さうさう、柏原《かしわばら》の奥さんが、お前の写真を是非欲いと言つて、会ふ度《たび》に聒《やかまし》く催促するんで克《かな》はんよ。明日《あした》は用が有つて行かなければならんのだから、持つて行かんと拙《まづ》いて。未だ有つた
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