り》しつつ、器具と壜《ボトル》とをテエブルに置きて、直《ぢき》に退《まか》り出《い》でぬ。かく執念《しゆうね》く愛せらるるを、宮はなかなか憂《う》くも浅ましくも思ふなりけり。
雪は風を添へて掻乱《かきみだ》し掻乱し降頻《ふりしき》りつつ、はや日暮れなんとするに、楽き夜の漸《やうや》く来《きた》れるが最辱《いとかたじけな》き唯継の目尻なり。
「近頃はお前別して鬱いでをるやうぢやないか、俺《おれ》にはさう見えるがね。さうして内にばかり引籠《ひつこ》んでをるのが宜《よろし》くないよ。この頃は些《ちよつ》とも出掛けんぢやないか。さう因循《いんじゆん》してをるから、益《ますま》す陰気になつて了ふのだ。この間も鳥柴《としば》の奥さんに会つたら、さう言つてゐたよ。何為《なぜ》近頃は奥さんは些《ちよつ》ともお見えなさらんのだらう。芝居ぐらゐにはお出掛になつても可ささうなものだが、全然《まるつきり》影も形もお見せなさらん。なんぼお大事になさるつて、そんなに仕舞《しまひ》込んでお置きなさるものぢやございません。慈善の為に少しは衆《ひと》にも見せてお遣《や》んなさい、なんぞと非常に遣られたぢやないか。それ
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