りも宮は更に切なる誠を籠《こ》めて心痛せり。彼はただに棄てざる恋を棄てにし悔に泣くのみならで、寄辺《よるべ》あらぬ貫一が身の安否を慮《おもひはか》りて措《お》く能《あた》はざりしなり。
 気強くは別れにけれど、やがて帰り来《こ》んと頼めし心待も、終《つひ》に空《あだ》なるを暁《さと》りし後、さりとも今一度は仮初《かりそめ》にも相見んことを願ひ、又その心の奥には、必ずさばかりの逢瀬《あふせ》は有るべきを、おのれと契りけるに、彼の行方《ゆくへ》は知られずして、その身の家を出《い》づべき日は潮《うしほ》の如く迫れるに、遣方《やるかた》も無く漫《そぞろ》惑ひては、常に鈍《おぞまし》う思ひ下せる卜者《ぼくしや》にも問ひて、後には廻合《めぐりあ》ふべきも、今はなかなか文《ふみ》に便《たより》もあらじと教へられしを、筆持つは篤《まめ》なる人なれば、長き長き怨言《うらみ》などは告来《つげこ》さんと、それのみは掌《たなごころ》を指すばかりに待ちたりしも、疑ひし卜者の言《ことば》は不幸にも過《あやま》たで、宮は彼の怨言《うらみ》をだに聞くを得ざりしなり。
 とにもかくにも今一目見ずば動かじと始に念《おも》
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