万な、待たんか!」
答は無くて揮下《ふりおろ》したる弓の折は貫一が高頬《たかほほ》を発矢《はつし》と打つ。眩《めくるめ》きつつも迯《にげ》行くを、猛然と追迫《おひせま》れる檳榔子は、件《くだん》の杖もて片手突に肩の辺《あたり》を曳《えい》と突いたり。踏み耐《こた》へんとせし貫一は水道工事の鉄道《レイル》に跌《つまづ》きて仆《たふ》るるを、得たりと附入《つけい》る曲者は、余《あまり》に躁《はや》りて貫一の仆れたるに又跌き、一間ばかりの彼方《あなた》に反跳《はずみ》を打ちて投飛されぬ。入替《いりかは》りて一番手の弓の折は貫一の背《そびら》を袈裟掛《けさがけ》に打据ゑければ、起きも得せで、崩折《くづを》るるを、畳みかけんとする隙《ひま》に、手元に脱捨《ぬぎす》てたりし駒下駄《こまげた》を取るより早く、彼の面《おもて》を望みて投げたるが、丁《ちよう》と中《あた》りて痿《ひる》むその時、貫一は蹶起《はねお》きて三歩ばかりも※[#「※」は「しんにょう+官」、191−16]《のが》れしを打転《うちこ》けし檳榔子[#「檳榔子」に傍点]の躍《をど》り蒐《かか》りて、拝打《をがみうち》に下《おろ》せる杖
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