しや》らなくても宜《よろし》うございます」
 かく言争ひつつ、行くにもあらねど留るにもあらぬ貫一に引添ひて、不知不識《しらずしらず》其方《そなた》に歩ませられし満枝は、やにはに立竦《たちすく》みて声を揚げつ。
「ああ! 間さん些《ちよつ》と」
「どうしました」
「路悪《みちわる》へ入つて了《しま》つて、履物《はきもの》が取れないのでございますよ」
「それだから貴方はこんな方へお出《い》でなさらんが可いのに」
 彼は渋々寄り来《きた》れり。
「憚様《はばかりさま》ですが、この手を引張つて下さいましな。ああ、早く、私転びますよ」
 シォウルの外に援《たすけ》を求むる彼の手を取りて引寄すれば、女は※[#「※」は「足+禹」、189−5]《よろめ》きつつ泥濘《ぬかるみ》を出でたりしが、力や余りけん、身を支へかねて※[#「※」は「てへん+堂」、189−6]《どう》と貫一に靠《もた》れたり。
「ああ、危い」
「転びましたら貴方《あなた》の所為《せゐ》でございますよ」
「馬鹿なことを」
 彼はこの時|扶《たす》けし手を放たんとせしに、釘付《くぎつけ》などにしたらんやうに曳《ひ》けども振れども得離れざる
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