》ひて、
「大変失礼を致しました。些《ちよつ》と私《わたくし》も其処《そこ》まで買物に出ますので、実は御一緒に願はうと存じまして」
無礼なりとは思ひけれど、口説れし誼《よしみ》に貫一は今更腹も立て難くて、
「ああさうですか」
満枝はつと寄りて声を低くし、
「御迷惑でゐらつしやいませうけれど」
聴き飽きたりと謂《い》はんやうに彼は取合はで、
「それぢや参りませう。貴方《あなた》は何方《どちら》までお出《いで》なのですか」
「私《わたくし》は大横町《おおよこちよう》まで」
二人は打連れて四谷左門町《よつやさもんちよう》なる赤樫の家を出《い》でぬ。伝馬町通《てんまちようどおり》は両側の店に燈《ともし》を列《つら》ねて、未《ま》だ宵なる景気なれど、秋としも覚えず夜寒の甚《はなはだし》ければ、往来《ゆきき》も稀《まれ》に、空は星あれどいと暗し。
「何といふお寒いのでございませう」
「さやう」
「貴方、間さん、貴方そんなに離れてお歩き遊ばさなくても宜《よろし》いぢやございませんか。それではお話が達《とど》きませんわ」
彼は町の左側をこたびは貫一に擦寄《すりよ》りて歩めり。
「これぢや私《
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