すくな》からず、同業者といへども時としては彼の余《あまり》に用捨無きを咎《とが》むるさへありけり。独《ひと》り鰐淵はこれを喜びて、強将の下弱卒を出《いだ》さざるを誇れるなり。彼は己《おのれ》の今日《こんにち》あるを致せし辛抱と苦労とは、未《いま》だ如此《かくのごと》くにして足るものならずとて、屡《しばし》ばその例を挙げては貫一を※[#「※」は「口+恚」、184−1]《そそのか》し、飽くまで彼の意を強うせんと勉《つと》めき。これが為に慰めらるるとにはあらねど、その行へる残忍酷薄の人の道に欠けたるを知らざるにあらぬ貫一は、職業の性質既に不法なればこれを営むの非道なるは必然の理《ことわり》にて、己《おのれ》の為《な》すところは都《すべ》ての同業者の為すところにて、己一人《おのれいちにん》の残刻なるにあらず、高利貸なる者は、世間一様に如此《かくのごと》く残刻ならざるべからずと念《おも》へるなり。故《ゆゑ》に彼は決して己の所業のみ独《ひと》り怨《うらみ》を買ふべきにあらずと信じたり。
 実《げ》に彼の頼める鰐淵直行の如きは、彼の辛《から》うじてその半《なかば》を想ひ得る残刻と、終《つひ》に学ぶ能
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