」
「私《わたくし》は鰐淵の手代なのですから、さう云ふお話は解りかねます。遊佐さん、では、今日《こんにち》はまあ三円頂戴してこれに御印をどうぞお早く」
遊佐はその独《ひとり》に計ひかねて覚束《おぼつか》なげに頷《うなづ》くのみ。言はで忍びたりし蒲田の怒《いかり》はこの時|衝《つ》くが如く、
「待ち給へと言ふに! 先から風早が口を酸《す》くして頼んでゐるのぢやないか、銭貰《ぜにもらひ》が門《かど》に立つたのぢやない、人に対するには礼と云ふものがある、可然《しかるべ》き挨拶《あいさつ》を為たまへ」
「お話がお話だから可然《しかるべ》き御挨拶の為やうが無い」
「黙れ、間《はざま》! 貴様の頭脳《あたま》は銭勘定ばかりしてゐるので、人の言ふ事が解らんと見えるな。誰がその話に可然《しかるべき》挨拶を為ろと言つた。友人に対する挙動が無礼だから節《たしな》めと言つたのだ。高利貸なら高利貸のやうに、身の程を省みて神妙にしてをれ。盗人《ぬすつと》の兄弟分のやうな不正な営業をしてゐながら、かうして旧友に会つたらば赧《あか》い顔の一つも為ることか、世界漫遊でもして来たやうな見識で、貴様は高利を貸すのをあつ
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