彼の面《おもて》を注視せし風早と蒲田との眼《まなこ》は、更に相合うて瞋《いか》れるを、再び彼方《あなた》に差向けて、いとど厳《きびし》く打目戍《うちまも》れり。
風「どうかさう云ふ事にしてくれたまへ」
貫「それでは遊佐さん、これに御印《ごいん》を願ひませう。日限《にちげん》は十六日、宜《よろし》うございますか」
この傍若無人の振舞に蒲田の怺《こら》へかねたる気色《けしき》なるを、風早は目授《めまぜ》して、
「間君、まあ少し待つてくれたまへよ。恥を言はんければ解らんけれど、この借金は遊佐君には荷が勝過ぎてゐるので、利を入れるだけでも方《ほう》が付かんのだから、長くこれを背負つてゐた日には、体も一所《いつしよ》に沈没して了ふばかり、実に一身の浮沈に関《かか》る大事なので、僕等も非常に心配してゐるやうなものの、力が足らんで如何《いかに》とも手の着けやうが無い。対手《あいて》が君であつたのが運の尽きざるところなのだ。旧友の僕等の難を拯《すく》ふと思つて、一つ頼を聴いてくれ給へ。全然《まるまる》損を掛けやうと云ふのぢやないのだから、決《け》してさう無理な頼ぢやなからうと思ふのだが、どうかね、君
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