りるのだ。借りて返さんと言ひは為《す》まいし、名誉に於て傷《きずつ》くところは少しも無い」
「恐入りました、高利《アイス》を借りやうと云ふ紳士の心掛は又別の物ですな」
「で、仮に一歩を譲るさ、譲つて、高利《アイス》を借りるなどは、紳士たるもののいとも慚《は》づべき行《おこなひ》と為るよ。さほど慚づべきならば始から借りんが可いぢやないか。既に借りた以上は仕方が無い、未《いま》だ借りざる先の慚づべき心を以つてこれに対せんとするも能《あた》はざるなりだらう。宋《そう》の時代であつたかね、何か乱が興《おこ》つた。すると上奏に及んだものがある、これは師《いくさ》を動かさるるまでもない、一人《いちにん》の将を河上《かじよう》へ遣《つかは》して、賊の方《かた》に向つて孝経《こうきよう》を読せられた事ならば、賊は自《おのづ》から消滅せん、は好いぢやないか。これを笑ふけれど、遊佐の如きは真面目《まじめ》で孝経を読んでゐるのだよ、既に借りてさ、天引四割《てんびきしわり》と吃《く》つて一月|隔《おき》に血を吮《すは》れる。そんな無法な目に遭《あ》ひながら、未《いま》だ借りざる先の紳士たる徳義や、良心を持つて
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