こみち》を行けば、蹈処無《ふみどころな》く地を這《は》ふ葛《くず》の乱れ生《お》ひて、草藤《くさふぢ》、金線草《みづひき》、紫茉莉《おしろい》の色々、茅萱《かや》、穂薄《ほすすき》の露滋《つゆしげ》く、泉水の末を引きて※[#「※」は「鄰−おおざと+巛」、138−9]々《ちよろちよろ》水《みづ》を卑《ひく》きに落せる汀《みぎは》なる胡麻竹《ごまたけ》の一叢《ひとむら》茂れるに隠顕《みえかくれ》して苔蒸《こけむ》す石組の小高きに四阿《あづまや》の立てるを、やうやう辿り着きて貴婦人は艱《なやま》しげに憩へり。
彼は静緒の柱際《はしらぎは》に立ちて控ふるを、
「貴方もお草臥《くたびれ》でせう、あれへお掛けなさいな。未だ私の顔色は悪うございますか」
その色の前《さき》にも劣らず蒼白《あをざ》めたるのみならで、下唇の何に傷《きずつ》きてや、少《すこし》く血の流れたるに、彼は太《いた》く驚きて、
「あれ、お唇から血が出てをります。如何《いかが》あそばしました」
ハンカチイフもて抑へければ、絹の白きに柘榴《ざくろ》の花弁《はなびら》の如く附きたるに、貴婦人は懐鏡《ふところかがみ》取出《とりいだ》
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