朝夕に、なほ夜昼の別《わかち》も無く、絶えぬ思はその外ならざりし四年《よとせ》の久きを、熱海の月は朧《おぼろ》なりしかど、一期《いちご》の涙に宿りし面影は、なかなか消えもやらで身に添ふ幻を形見にして、又|何日《いつか》は必ずと念懸《おもひか》けつつ、雨にも風にも君が無事を祈りて、心は毫《つゆ》も昔に渝《かは》らねど、君が恨を重ぬる宮はここに在り。思ひに思ふのみにて別れて後の事は知らず、如何《いか》なる労《わづらひ》をやさまでは積みけん、齢《よはひ》よりは面瘁《おもやつれ》して、異《あやし》うも物々しき分別顔《ふんべつかほ》に老いにけるよ。幸薄《さいはひうす》く暮さるるか、着たるものの見好げにもあらで、なほ書生なるべき姿なるは何にか身を寄せらるるならんなど、思は置所無く湧出《わきい》でて、胸も裂けぬべく覚ゆる時、男の何語りてや打笑む顔の鮮《あざやか》に映れば、貴婦人の目よりは涙すずろに玉の糸の如く流れぬ。今は堪《た》へ難くて声も立ちぬべきに、始めて人目あるを暁《さと》りて失《しな》したりと思ひたれど、所為無《せんな》くハンカチイフを緊《きびし》く目に掩《あ》てたり。静緒の驚駭《おどろき》
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