て、
「決《け》して穢《きたな》いのでは御坐いませんけれど、つい心着《こころつ》きませんでした」
 懐紙《ふところがみ》を出《いだ》してわざとらしくその吸口を捩拭《ねぢぬぐ》へば、貫一も少《すこし》く慌《あわ》てて、
「決《け》してさう云ふ訳ぢやありません、私は日本莨は用ゐんのですから」
 満枝は再び彼の顔を眺めつ。
「貴方、嘘をお吐《つ》きなさるなら、もう少し物覚《ものおぼえ》を善く遊ばせよ」
「はあ?」
「先日|鰐淵《わにぶち》さんへ上つた節、貴方召上つてゐらしつたではございませんか」
「はあ?」
「瓢箪《ひようたん》のやうな恰好《かつこう》のお煙管で、さうして羅宇《らう》の本《もと》に些《ちよつ》と紙の巻いてございました」
「あ!」と叫びし口は頓《とみ》に塞《ふさ》がざりき。満枝は仇無《あどな》げに口を掩《おほ》ひて笑へり。この罰として貫一は直《ただち》に三服の吸付莨を強《し》ひられぬ。
 とかくする間《ま》に盃盤《はいばん》は陳《つら》ねられたれど、満枝も貫一も三|盃《ばい》を過し得ぬ下戸《げこ》なり。女は清めし猪口《ちよく》を出《いだ》して、
「貴方、お一盞《ひとつ》」
「可
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