ひ物を為るのだ。ああ言《いは》れて見ると誰《たれ》でも些《ちよつ》と憎くないからね」
甘「遉《さすが》は交際官試補!」
佐「試補々々!」
風「試補々々立つて泣きに行く……」
荒「馬鹿な!」
言《ことば》を改めて荒尾は言出《いひいだ》せり。
「どうも僕は不思議でならんが、停車場《ステエション》で間を見たよ。間に違無いのじや」
唯《ただ》の今《いま》陰ながらその健康を祷《いの》りし蒲田は拍子を抜して彼の面《おもて》を眺《なが》めたり。
「ふう、それは不思議。他《むかふ》は気が着かなんだかい」
「始は待合所の入口《いりくち》の所で些《ちよつ》と顔が見えたのじや。余り意外ぢやつたから、僕は思はず長椅子《ソオフワア》を起つと、もう見えなくなつた。それから有間《しばらく》して又|偶然《ふつと》見ると、又見えたのじや」
甘「探偵小説だ」
荒「その時も起ちかけると又見えなくなつて、それから切符を切つて歩場《プラットフォーム》へ入るまで見えなかつたのじやが、入つて少し来てから、どうも気になるから振返つて見ると、傍《そば》の柱に僕を見て黒い帽を揮《ふ》つとる者がある、それは間よ。帽を揮つとつたから間に
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