《フレンド》、最も悪《にく》むべき者は高利貸ぢや。如何《いか》に高利貸の悪むべきかを知つてをるだけ、僕は益《ますま》す友《フレンド》を懐《おも》ふのじや。その昔の友《フレンド》が今日《こんにち》の高利貸――その悪むべき高利貸! 吾又何をか言はんじや」
彼は口を閉ぢて、貫一を疾視せり。
「段々の君の忠告、僕は難有《ありがた》い。猶自分にも篤と考へて、この腐れた躯《からだ》が元の通潔白な者に成り得られるなら、それに越した幸は無いのだ。君もまた自愛してくれ給へ。僕は君には棄てられても、君の大いに用られるのを見たいのだ。又必ず大いに用られなければならんその人が、さうして不遇で居るのは、残念であるよりは僕は悲い。そんなに念《おも》つてもゐるのだから一遍君の処を訪ねさしてくれ給へ。何処《どこ》に今居るかね」
「まあ、高利貸などは来て貰《もら》はん方が可い」
「その日は友《フレンド》として訪ねるのだ」
「高利貸に友《フレンド》は持たんものな」
雍《しとや》かに紙門《ふすま》を押啓《おしひら》きて出来《いできた》れるを、誰《たれ》かと見れば満枝なり。彼|如何《いか》なれば不躾《ぶしつけ》にもこの席には顕《あらは》れけん、と打駭《うちおどろ》ける主《あるじ》よりも、荒尾が心の中こそ更に匹《たぐ》ふべくもあらざるなりけれ。いでや、彼は窘《くるし》みてその長き髯《ひげ》をば痛《したたか》に拈《ひね》りつ。されど狼狽《うろた》へたりと見られんは口惜《くちを》しとやうに、遽《にはか》にその手を胸高《むなたか》に拱《こまぬ》きて、動かざること山の如しと打控《うちひか》へたる様《さま》も、自《おのづか》らわざとらしくて、また見好《みよ》げにはあらざりき。
満枝は先《ま》づ主《あるじ》に挨拶《あいさつ》して、さて荒尾に向ひては一際《ひときは》礼を重く、しかも躬《みづから》は手の動き、目の視《み》るまで、専《もつぱ》ら貴婦人の如く振舞ひつつ、笑《ゑ》むともあらず面《おもて》を和《やはら》げて姑《しばら》く辞《ことば》を出《いだ》さず。荒尾はこの際なかなか黙するに堪《た》へずして、
「これは不思議な所で! 成程間とは御懇意かな」
「君はどうして此方《こちら》を識《し》つてゐるのだ」
左瞻右視《とみかうみ》して貫一は呆《あき》るるのみなり。
「そりや少し識つてをる。然し、長居はお邪魔ぢやらう、大
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