。それだけ葉が生い茂るようでは、来年あたり花をつけるかも知れない、と私は思った。どうだい……という得意の眼付で、妻の顔を見返したし、またやがて、友人や叔父の顔をも見返してやった。
 ただ悲しいことには、蓮の葉の裏面や柄に、油虫が沢山群っていた。鉢の上方に桃の一枝がさし出ていて、それから伝播したものらしい。私は惜し気もなくその桃の枝を切り去り、それから蓮の葉の油虫を鏖殺してやった。蓮の葉は勢を得たように、青々と茂っていった。もう余分の肥料も泥土に吸いつくされたらしく、水がさっぱりと澄んで、青い藻まで生えていて、蓮池特有の匂いも、気のせいばかりでなく実際に感ぜられた。それから霜時になると、枯蓮の趣きも充分に見られた。
 そして、冬を越して今年の春である。今日彼岸の入りに、藁の覆いを取去ってみると、鉢の泥は肥えて黒ずみ、水は冷く澄み返り、所々に枯葉の柄が残っている。今に其処から、青々とした巻葉が伸び出し、それが円く大きく拡がって露のしずくを宿す頃には、更に花の蕾が伸び出してきて、夜明の光に音を立ててぱっと開くであろう、などと想像すると私は、蓮のうてなに坐すような清浄な心境を覚ゆる。それにして
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