嬉しかった。庭の真中に据えさして、仕事に疲れた眼を慰めた。径一尺余りの小さな鉢だったが、五六枚の葉をつけ、花を二つ開いていた。鉢の中の藻の間に、糸蚯蚓が沢山いたので、それを食い尽させるために、緋目高を四五匹放ったりした。
 そのうちに、淡紅色の花弁が散ってゆき、葉も一二枚黒ずんで枯れていった。花の後の漏斗形の萼は、実を結ぶ様子もなく、小く萎びて立枯れてしまった。残りの葉も、まだ霜を受けない先に枯れかかった。鉢の中を覗いてみると、彎曲したこちこちの根が、土の上に痛ましく露出していた。恐らく蓮は、径一尺余りの小さな鉢の中で、充分に伸びることが出来ず、窮屈の余りに窒息しかけたのであろう。そう思うと、吾が愛するこの蓮のために、充分の泥と水とを与えてやりたくなった。
 私は近くの瀬戸物屋へ出かけていって、其処にある一番大きな蓮鉢を買い求めた。径三尺ばかりの分厚なもので、田舎の広々とした蓮田には及びもつかないが、一二株の蓮の生長には充分らしかった。私はそれを日当りのよい所に据えて、庭の隅から掘り起した土を盛り、それを水にこねて、蓮を移し植えようとした。そこへ、叔父がひょっこりやって来た。漢籍や盆栽
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