の間彼女は、初めの一週間は毎日、後の一週間余は一日置きに、文字通り神経をすりへらす手術を受けなければならなかった。神経質な彼女はそれを非常に苦にした。出かける時には、つまらない用事に愚図々々こだわって、なるべく時間を後らそうとした。帰ってくると、眉をしかめながら碌々口も利かないで、数時間じっとしてることさえあった。それから非常に上機嫌になったり不機嫌になったりした。それがまた一々私に反映した。
 九時頃に起き上る。もう朝食の用意は出来ている。私は急いで朝の身仕舞をする。然しそれはごく簡単だ。歯を磨き、顔を洗い、髭を剃り、クリームを顔と頸と手先との皮膚にぬり、髪に櫛を入れる。それだけだ。然し秀子の身仕舞は中々済まない。第一に髪を結わなければならない。(感心に彼女は自分で髪を束ねて、決して人手を借りなかった。)次には長い長い御化粧が初まる。歯医者へ通うので殊に念が入るのだ。細いしなやかな指先を、顔や頸筋へ蛇のようにのたくらせながら、何時までも鏡台の前から立とうとしない。そのうちにみさ[#「みさ」に傍点]子が泣き出す。はる[#「はる」に傍点]は座敷の掃除やなんかでまだ手がふさがっている。私は
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