すこへ落ちたら大変だ」
そう思って、なおかんしゃくを起こして、ひどく鳴りはためきました。
長者《ちょうじゃ》の方でも一生懸命でした。金の日の丸の扇《おうぎ》で雷の神を招き落とさなければ、とうていその不思議な珠《たま》を手に入れることが出来ないのです。雨に濡れるのもかまわずに、あずまやの中から飛び出して、庭の中につっ立って、金の扇で招きました。
そしてしばらく、雷の神と長者との争いが続きました
するうちに、空の黒雲の縁《ふち》からのぞいていた雷の神は、あまりしつこく金の日の丸の扇で招かれるのがしゃくにさわってきました。そしてまた、その金の日の丸のぴかぴかしたいろに、知らず知らずひきつけられてゆきました。しまいには、辛抱《しんぼう》しきれなくなって、なかばかんしゃくまぎれに、なかばうっとりして、非常な勢いで、金の日の丸めがけて、一息《ひといき》に落っこってやりました。
すさまじい電光《でんこう》と雷鳴《らいめい》と黒雲との渦巻《うずま》いた中に、金の日の丸がぴかりと光っただけで、後は何にもわかりませんでした。
やがて、長者の家の人達が、正気《しょうき》づいて駆《か》けつけてみ
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