ないものですから、なおさらじれだしました。
「どうすれば庭の木に雷の神が落ちるだろう」
そこで長者は、何か雷の神の好きなもので招《まね》き落してやろうと考えました。
その頃、ほど近い都に、名高い物知《ものし》りが住んでいました。長者はその物知りのところへ使いをやって、雷の神の好きなものをたずねさせました。
やがて、使いの者が帰って来て、都の物知りから聞いてきたところでは、雷の神はぴかぴか光った赤いものが好きだということでした。ぴかぴか光った赤いものを見せると、雷の神がすぐに落ちてくるから危ない、と物知りは言ったそうです。
「なに、危ないことはない。仕掛《しか》けがしてあるのだから」
けれども、そのぴかぴか光った赤いものというのは、一体何のことだろう、と長者《ちょうじゃ》は考えました。
「はて……」
その時ふと思いついて、長者ははたと膝《ひざ》を叩きました。また家来《けらい》達に言いつけて、大きな日の丸の扇《おうぎ》をこしらえさせました。畳《たたみ》二枚ほどもある大きな扇で、まん中に大きく金の日の丸を書いたものでした。それで雷《らい》の神を招き落とそうというのです。
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