武田は云った。
「ははは、僕んとこと競争してみ給い。」
佐野は愉快になった。そしてその話を敏子にした。敏子は笑わなかった。
「やっぱり、わたしをいくらか、想っていらしたんじゃないかしら。」
「ばかな、自惚れもいい加減にしないか。」
佐野は何かしら、生活の自信というようなものを持ち初めていた。愉快そうに笑った。
底本:「豊島与志雄著作集 第三巻(小説3[#「3」はローマ数字、1−13−23])」未来社
1966(昭和41)年8月10日第1刷発行
初出:「新潮」
1926(大正15)年9月
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2008年1月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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