のことを考えている。そして彼等は、私が前に描き出した人間像に対して、或は厳しい眼を向け、或は優しい眼を向ける。
*
ここでまた、青島の都市に飛ぼう。
青島は、都市のなかでのハイカラなインテリ青年である。煉瓦とコンクリートと赤瓦との建物、鋪装しつくされた街路、アカシアやプラタナスの並木、支那には珍らしい青澄な海と美しい砂浜、苦心の植林によるこんもりと茂った小山、凡てが若々しく、知的な眼を輝かしている。
港へ船がはいる前、海上から眺める※[#「山+労」、350−上−7]山の姿は絶勝である。秦の始皇帝がこの頂から、海の彼方の蓬莱島の不老不死の霊薬を偲んだという伝説に、如何にもふさわしい山容である。この右手の※[#「山+労」、350−上−9]山に対して、左手にも相似形の大珠山が聳えている。また、汽車で青島から出発する時、車窓から見える膠州湾内の帆形は微笑ましい。そして飛行機上から眺むれば、青島はただ赤一色の町である。
青島全体が半島の先にのっかっている。半島の中央の小山は公園であり、半島の幾つもの岬も公園であり、それらの公園をつないで、海岸から小山へかけて、自動車を走らせる
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