けだすんじゃないか。それが、公の席上で顔を合わせると、好人物同士が、だらしのない者同士が、お互に緊張しあってるんだから、僕たちから見ると、おかしいんだ。」
そう云わるれば、私にだってよく分る。各方面の人々が集まってる場所では、文学者は最も率直な――無遠慮無作法だと云えるほど自由な――振舞をなすことが多いのに比して、文学者だけの集合の場合には、実際、一種の冷たい緊張した空気がかもし出されて、体面を保つというのか、気兼ねをするというのか、隙をねらいあってるというのか、とにかく、お互いに襟をつくろっておるという風になりがちである。会場から外に出て、初めてほっとする者が、いくらもあることだろう。
それを、文学者の非社交性だと一言に片付けることは、妥当でない。文学者にはむしろ、人なつっこい淋しがりやが多いものだ。常住孤高な境地にあるというようなのは少ない。してみると、右のような現象は、ふだん、物を観察したり書いたりしている態度――仕事の上の一種のポーズ――それの不知不識の現れから起るのではあるまいか。顔をつき合せることによって、お互に相手の書いたものを読んでるという気持、転じて、お互に相手か
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