街路も、それから人通りさえ、凡てのものが雨に洗われて、空気の澄んだ寂寞とした通りを、少し気恥かしいほどの高い泥足駄で、二人はゆっくり歩いて行った。俊彦は暫くたってから、こんなことを云い出した。
「僕は何だか、運命といったものが信じられる気がしますよ。運命と云っても、人間自身の力でどうにもならない、所謂生れながら定まった宿命ではありません。自分の心と一緒に動く或る大きな力です。何か或る方向へ心を向けると、それと一緒に、同じ方へ、運命が動き出すように思えるのです。自分の信念の流れと運命の流れとが、一つになるといった気持です。それを思うと非常に僕は心強くなります。神の意志とでも、自然の反応とでも、人によっていろんな名前をつけるでしょうが、僕に云わすれば、天の交感ですね。その天の交感を、自分が荷ってるということが、はっきり感ぜられるようです。そして僕は、此度は反対に、その天の交感で……運命の動きで、自分の考えの正しいかどうかを見定めたいんです。心を或る方向へ向ける時、その向け方が本当のものである時には、岐度運命の同じ動きが感ぜられますし、向け方が間違ってる時には、それが少しも感ぜられないんです
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