い彫像のような顔を火先がちらちら輝らしてるのを、昌作はじろりと見やっただけで、再び視線を火の方へ落した。
 そして二人は、黙り込んだまま、夜通しでも動かなかったかも知れない。けれど、それから十四五分たった頃、階段に二三の人の足音がした。昌作は自分でも不思議なほど喫驚して、狼狽して、俄に立上って、卓子の上にある外套と帽子とを取った。そして、勘定を払うのさえ忘れて逃げ出した。
 沢子は機械的に立上って、其処に釘付にされたようになって、彼の後ろから云った。
「佐伯さん、また明日にでも来て下さらない? 私、まだ云うことがあるから。」
「来るよ。」
 そう彼は答えたが、自分にも言葉の意味が分っていなかった。そして彼は階段の上部で、三人の客の側を、顔をそむけて駈けるように通りぬけた。
 薄く霧がかけていて、それでいながら妙に空気が透き通ったように思える、静かな寒い晩だった。昌作は夢遊病者のように、長い間歩き廻った。彼は薄暗い通りを選んで歩いた。人に出逢うと、何かを恐れるもののように顔を外向けた。古道具屋などの店先に、古い刃物類があるのを見ると、一寸立止ったが、またすたすたと歩き出した。そして、初め
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