自分で生活を立てるようになさいな。それには、此度のことは丁度よい機会じゃありませんか。こんなよい就職口は、また探そうたってありはしないわよ。それは九州なんかに行くのは嫌でしょうけれど、それかって、東京に居てどうするつもりなの。私こんなことを云うのは嫌だけれど、あなたのお母さんが亡くなられる時、片山のお父さんに預けておかれた財産だって、もうとっくに無くなってるじゃないの。片山はああいう人ですから、あなたの月々の費用なんか黙って出していますが、そして私が、もう佐伯さんも自分で働いて食べるように意見してあげた方がいいって云うと、佐伯君も人に意見される年頃でもあるまいし、何か考えがあるんだろうなどと、却ってあなたを庇ってはいますが、それをいいことにして、いつまでものらくらしていてはあなたもあんまり冥利につきはしなくって? 今度は否でも応でも、あなたは暫く九州に行って辛抱なさるが本当だと、私は心から信じきってるのよ。片山があんなに骨折ってくれたのをそのままにしておいて、一体あなたはどうするつもりなの?」
「いえ私は、九州行きを断るつもりじゃないんです。ただ……どうして片山さんが私を九州なんかに…
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