してるらしいエクセントリックな所があるね。そのうち二人の関係は可なり進んだらしく、一緒に物を食いに歩いたりしたこともあるそうだ。所が可笑しいじゃないか、愈々の場合になってあの女はその男をぽんとはねつけたものさ。何でも、私はやはり……、」そして禎輔は、其処につっ立てる昌作の顔をじっと見つめた、「やはり宮原さんを愛しています、というようなことでね。」
 昌作は立っておれなくなって、長椅子の上に倒れるように腰を下した。
「このことを君はどう思う?……僕は宮原という男とあの女との関係をよくは知らない。君はもうよく知ってるだろうが……何でも宮原という男は、子供のある妻君を追ん出してまでおいて、そのくせあの女と一緒にはならずに、而も往き来を続けてるというじゃないか。二人の間には常人には分らないよほど深い何かの関係があるものだと、僕は思うよ。それからまた一方に、あの沢子という女は、胸の奥底は非常にしっかりしていながら、精神的に……或は無自覚的に、可なり淫蕩な……というのが悪ければ、遊戯心の強い女だと、僕は思うのだ。僕の会社の男が引っかかったのもそこだ。……それで、僕は君のために心配したのさ。君の方で次第に深入りしていって、最後に、私はやはり宮原さんを愛しています、とやられたらどうする?……或はまたうまく君達が一緒になったとした所で、あの女の心に宮原のことがいつ引っかかって来ないものでもない。手近な例はこの僕自身だ。頭の隅に放り込んで殆んど忘れていた遠い昔のことが、ごく僅かな機会に、全く何でもない場合に、ふいに僕を囚えてしまったじゃないか。ましてあの女と宮原とは、僕みたいな古い昔のことでもないし、そんななまやさしい関係でもない。心の奥まで、魂の底まで、深く根を下してる何かがあると、僕は思うのだ。……このことさえ君が分ってくれれば、他のことはどうでもいい。僕と君のお母さんとの話なんかも、嘘だったとしてもいいさ。ただ僕は君に、盛岡の二の舞をやってくれるなと、老婆心かも知れないが、切に願いたいのだ。こんど変なことになったら、君の生活はもう二度と立て直ることはないだろう、という気が僕にはする。」
 昌作は咽び泣きが胸元へこみ上げてくるのを覚えた。身体中が震えた。そして叫んだ。
「そうです。此度躓いたら、私の生活はもう立て直りはしません。まるで暗闇です。何にも私を支持してくれるものはないんで
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