王子はまだ半《なか》ば夢からさめずに、いきなり飛び起きました。とたんに、老人の姿は雲と共にすーっと消えてしまいました。王子はしばらくぼんやりしていましたが、やがて老人の言葉をはっきり思い出しました。そして、是非《ぜひ》ともその言葉に従わねばならないような気がしました。

      二

 王子は身仕度《みじたく》をし、長い外套《がいとう》をつけ円《まる》い帽子をかぶり、短い剣を腰《こし》にさして、誰にも気づかれないように、そっと城をぬけ出しました。外はまっ暗な夜でしたが、不思議なことには、ほの白い一筋の道が森の方へ通じています。その道を歩いてゆくと、ちょうど土手《どて》でも乗り越すように、高い城壁《じょうへき》をもわけなく越せました。それから先は、魔物が住んでいるという森の中へ、けわしい坂になっています。けれど王子はほの白い道を頼りに、恐れる気色《けしき》もなく、ずんずん進んで行きました。高い山の頂《いただき》の方へ、深い森の中を上ってゆくのですが、まるで宙をかけるように、少しも骨が折れないで、非常に早く道がはかどりました。王子はそれに力づいて、息をするまも立ち止まらずに、まっし
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