問と同じように、確かな本当のことであると思われました。ただ、国王から言われた通り眼がさめると消えてなくなるのだけが不満でした。もし、眼がさめてからも夢が消えなかったら……! 夢を捕《つかま》えることが出来たなら……!
「そうだ、夢を捕えてやろう」と王子は考えました。
 ところがどうして夢を捕えてよいか、いくら考えてもわかりませんでした。それで王子は学者達に、夢を捕える仕方《しかた》をたずねました。けれどいくら学者達が知恵をしぼっても、そんなことはとても考え出されませんでした。
「夢を捕えることばかりは、私共の知恵も及びませぬ」と学者達は答えました。
 それでも王子は力を落としませんでした。この上は自分一人で夢を捕《つかま》えてやろうと決心しました。夜寝る時、一生懸命にその覚悟をしておいて、それから眠りました。そして夢の中にいろんなものが出て来ると、はっと眼を覚ましながら両手を差し出しました。けれどその時には、もう夢は消えてしまっていました。王子は口惜《くや》しくてたまりませんでした。どうかして夢を捕えたいと思って、両手を布団《ふとん》の外に出して寝ましたし、しまいには、網や籠《かご》な
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