形も少しも変わりませんでした。知恵の鏡の力をもっててしてもどうにもならないとすれば、人間の力でどうなりましょう。ただ黄金の卵というきりで、何のことやらわかりませんでした。多くの学者達も口をつぐんでしまいました。
 国王は少し変な気がしてきまして、あの金色の鳥は魔法使いでなくて、あるいは王子の言うように夢の精だったかも知れないと、思い始めました。王子は初めから夢の精だと思っていましたから、今それが卵になってしまったのを見て、大変悲しがりました。そして、国王からその卵をもらって、自分の部屋の戸棚《とだな》に飾りました。

      六

 その晩、王子は夢をみました。この前の通り紫の雲に乗って、あの白い毛の老人が出て来ました。そして王子にこう言いました。
「王子、あなたは無法なことをなされました。けれど今度《このたび》だけは許してあげます。もう二度と森の中に上ってきてはいけません。夢の精はなかなか人間の手に捕《つか》まるものではありません。もうちゃんと私の懐《ふところ》に戻ってきています。そして、あなたには知恵の鏡に免《めん》じて、卵を一つ差し上げたそうです。それを大事にしまっておおきな
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