難だろう。
 さて、それら自然の風致と動植物との指導統制には、全日曜を捧げつくしても、なお足りないほどであろう。なぜならこの指導統制は、自然の状態のなかに於ける微妙な触手を必要とし、随って、実際の仕事よりもより多く、それらのもののなかに自我を没入した観照が必要だからである。庭造りが、一木一石の位置や向きについて、長時間眺め入り思いを凝らすのと、同様であり、それに加うるに、対象物のところへまで全人的におりてゆかなければならない。
 ――この構図は、木村にとって、何よりも楽しいものなのである。

 この不思議な庭の、竹と硝子板との垣根のなかで、亀は石の上に甲羅を干しており、蝦蟇は歯朶の茂みの奥に腹をふくらまして跪坐しており、蝦や蟹は藻の中に水をふいており、鯰や鯉はいずこにか隠れて見えず、赤いめだかや鮒が却って静けさを増す軽快さで泳いでいるなかに、黒輝石のような小さなげんごろう虫が、時折、水面にのぼってきてはまた直ちに水底に沈む。それらのものを、木村は、黒猫か白猫かを抱きながら、木影にしゃがんで、じっと眺め入っている。
 それが、夕方になって、彼の心も身体もしびれてくる頃になると、年若い女の
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