、今は夜ですが、昼間、太陽の光のある時には、思考し続ける仮睡者の世界も、酩酊者の世界も、曲折せる廊下も、この庭の中に喚起されます。そういう喚起は、大なる収獲となります。
その収穫のことを直接に語らないで、なぜ、しめやかな夕暮のことだけを語ったのでしょうか。やはり、私は彼女の血の一滴がほしいのでした。それがこの構図の焦点だった筈です。然し、それが見出せなかったのは、ここでは、喪失ではありません。
夢に生きることもやがて現実に生きることである、とでも申しましょうか。
底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社
1967(昭和42)年11月10日第1刷発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2006年4月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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