うな、何か不満なことがあるなら、はっきり云ってごらんなさい。浜地さんのことについて、何か腑に落ちないことがあったら……。今のうちなら、どうにでもなるんですから……。そりゃあ浜地さんのことはお前が一番よく知ってるのだから、はっきり理由の立つことなら、わたし達も無理に話を進めようとするのではありませんよ。だけど、昨晩のような、嘘だか本当だか分らない、まるで酔払いの寝言みたいんじゃあ、取り上げるわけにはいきませんからね。」
そんな風に云われると、僕はもう参ってしまった。母の気持は変に真剣に動いていた。初め僕は、兄との喧嘩の方ばかりを気にしていたが、母はそんなことはけろりと忘れたかのように、浜地のことばかりを、真面目に考えてるらしかった。
僕は頭をこつこつ叩きながら云った。
「酔払ってたんですよ、昨晩は……。何だかでたらめに饒舌ってるうちになお酔払ってきて……。」そこで僕はちゃんと坐り直した。「いえ、賛成です。浜地と敏子との話には大賛成ですよ。」
「だって、お前は昨晩、何と云いました。」
「さあ、何といったか……だがもういいんです。僕は良縁だと思っています。」
そうした僕の云い方が、母を
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