文学には違いないのである。――斯くて、作家達は各自にそれぞれ特別な肚の据え方をして、或は観念的に或は方法的にいろいろの探究をなし、極言すれば、文学ジャンルの進展を夢みてる者もあろう。
斯かる事態から、当面の混乱と行詰り的現象が生じている。然しながら、やがてはそれがつきぬけられることを、文学――に今では淡い実感しか盛られなくなっているが、他日濃い実感が盛られるであろう文学に――私は信頼したい。要は、文学の持つプラス的なものが如何にして強力に確立されるかに懸っている。
茲まで云ってきて、私はただ云いっ放しにしておこう。この間の事情の闡明や見通しは甚だ厄介なことであって、且つ、文学実践によって表明せらるるのを待たなければならない。いろいろの情勢上、さしあたっては悲観的ながら、然し文学は常に楽観的な夢を根強く持つものである。
底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社
1967(昭和42)年11月10日第1刷発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2006年4月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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