。窓の中に壁があるような構造を必要とする気候であり、個別住宅が主となっている現状に於て、都市生活のことを考慮する者は、洗濯物の処置についても更に一考すべきであろう。

      K

 東京に於て、新たに、二つの生活的ルンペン性が見られる。
 一つは、頸白粉の若い女たちである。旧市域の辺境あたりに多い。恐らくは、カフェーやバーなどの後を追って著しく殖えた小さな特殊飲食店、小料理屋とかおでん屋とかの女中たちでもあろうか。平素どんな生活をしているのか、私は知らない。
 彼女等は、朝から、顔は素肌で、清い血色の少い或は濁った血色の多い皮膚をむきだしにしているが、耳から※[#「臣+頁」、第4水準2−92−25]へかけた一線より下の頸筋には、真白に白粉をぬりたてている。前夜の白粉をそこだけ洗い残しているのであろう。襟白粉ではなくて、全く頸白粉の語がふさわしい。
 頸白粉の彼女等には、生活の放逸性さえももはやなく、ただ生活のルンペン性がある。もう彼女等は、普通飲食店の女中は勿論、カフェーやバーの女給をさえも、勤め難い状態に立到ってるがようである。
 第二は、草履ばきで、多くは板裏などの草履ばきで
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