ず、膨張せず、萎縮せず、賑かからず、淋しからず、ただあるがままに満ち足って、空疎を知らず、漲溢を知らず、恐るることなく、蔑むことなき、清爽たる気魄である。
 それはまた、梅花の気魄である。霜雪の寒さを凌ぎ、自らの力で花を開き、春に魁けして微笑み、而も驕ることなく、卑下することなく、爛漫たる賑かさもなく、荒凉たる淋しさもなく、ただ静に己の分を守って、寒空に芳香を漂わしてる姿は、まさに気品そのものの気魄である。しみじみと梅花に見入る時、恐怖や蔑視や悲哀や歓喜など、凡て心を乱すが如き情は静まって、ただ気高き気品の気魄に、人は自ら打たるるであろう。
 気品はそれ自身の性質からして、清浄なる白色たるべきである。赤や青や黄など、何等かの色に染められた気品は、世に存しない。固より、赤や青や黄や紫など、そういう色彩が持ち得る気品はあるけれども、気品そのものの色はどこまでも白色である。然し単に白色のみでは足りない。純白の気分を破らない程度に於て、何等かの点彩を要する。鮮かなる一点の色彩を包んだ純白、それが気品の色である。
 この気品の色はまた、梅花の色に見らるる。黎明や薄暮の微光の中に浮出す、ほの赤きま
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