よろしかろうが、純白はあまり見当らない。大仏次郎君からシャム猫の子を貰うつもりだったが、純白でないから止めた。さし当り、純白の日本猫、そして尻尾のすんなり長いもの、ときめている。金目銀目は実はあまり珍重したものでなく、水色に青く澄んだ眼が望ましい。
 だいぶ前のことだが、野上彰君が猫を食う会を拵えようと私に提案したことがある。猫好きである以上、猫の血の一滴ぐらいは体内に入れておくべきだ、との趣旨から、猫の肉を食おうというわけだ。猫好きは多いし、猫を好んで描く画家も多い。この議が大仏次郎君に伝えられると、さしもの猫好きも眉をひそめた。よしそれなら、なんとか騙かして食わせてやれと、会合の実現をはかったが、遂にだめだった。犬なら赤犬の肉がうまいとされているが、猫なら何色がうまいか見当がつかない。但し、猫の肉は泡立ちがひどいそうだが、その泡を除けば、うまいことは確からしい。然し問題は、猫の肉をどうして手に入れるか、そしてどういう風に料理するかだ。知り合いの料理屋や料理人に相談してみたところ、初めから断られたり、請け合ったままで立消えになったり、遂に実現をみない。
 そのうちに、猫肉試食などに対
前へ 次へ
全9ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング