崔之庚は立上りました。いと満足げな温良な様子でした。

 そして、十日ほど後には、河のほとりの野原で、短刀に胸をえぐられて死体となってる崔之庚が見出されたのでありました。
 その河のほとりに、今でも小さな然し頑丈な碑が一つ建っております。何のためのものとも分らない無銘の碑でありますが、もしそれに文字が刻まれたとしたなら、その文字を読み解けば大凡このような物語となるでありましょうか。



底本:「豊島与志雄著作集 第四巻(小説4[#「4」はローマ数字、1−13−24])」未来社
   1965(昭和40)年6月25日第1刷発行
初出:「文芸春秋」
   1940(昭和15)年12月
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2007年11月13日作成
2008年1月15日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全28ページ中28ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング